少し寒気がゆるんで、カチコチだった路面も濡れた感じになってきました。3月ですね。雪もやや締まってきたとはいえ、それでも子どもたちよりは遥かに高い雪の壁になっています。これから隣のビデオシアターギャラリーへビデオやDVDを借りに行くところです。
さて盛岡市内の「ちいさな野菜畑」というショップ(ジャンルは何だろう。産直店でもあり、食事もできます。こだわりの加工品日用品も仕入れています)に、今期初めて販売を意識して作付けしたジャガイモを出荷してみましたが、それに伴って調べものをしてみました。
ジャガイモは低温貯蔵することでデンプンが糖に変わり、甘みが増すということは割合知られていることです。北海道の産地ではそうして「熟成」されたジャガイモを出荷しているようです。わざわざ収穫後の農家がこぞって出荷する秋の時期に競合して販売するよりも、せっかく当地域には農協に雪室があって、当園では米も貯蔵に利用しているので、雪室貯蔵して、お店からジャガイモが品薄になるのをじっと待ってから販売した方がお客さんのためにもなりますね。
それで実際11月に雪室に入れて4か月経ち、そのまま作業場に置きっぱなしにしていたものと比べてはたして糖分が増えたかどうか、、、という実験を、土壌診断室で普及員とともに行ってみました。
まずジャガイモの皮を剥き、包丁で断片を切って搾ります。写真の器具の丸いくぼみにジャガイモの汁がたまるので、それを糖度計にたらして測るのです。
糖度計の青い部分に汁をたらしてカバーをし、後は覗くだけ。
こんな風に覗くと、中には目盛りに数字が打ってあり、そこにその糖度の数字のところまで青い色が見えて、その境界線の数値を読み取ります。
搾り器具だけではなく、オロシ器ですってキッチンペーパーで濾した液を測ってもみました。搾り器具のときと、だいたい数値は同じでした。すりおろしの濾した液をさらに5Bの濾紙で濾過もしてみました。すると青い線がくっきりと見え、正確に数値を読み取ることができました。
さて、その結果、なんと、雪室に貯蔵したジャガイモよりも、当園の作業場に放置(凍みないようにはしましたが)したものの方が糖度が高いことがわかり、ちょっと驚いています。
数値(Brix値)でいうと、
雪室貯蔵 メークイン8.5/男爵7.5
作業場貯蔵 メークイン11.9/男爵9.1
という結果でした(複数計測のおよその平均値)。
ネット検索した限りですと、通常は、メークイン4〜5、男爵5〜6とあるようですが、メークインの方がもともと甘いかと思います。サツマイモで8〜12とあるので、ちょうどサツマイモ級の甘さになっているということでしょうか。確かにふかして塩で食べたりした感じでは、サツマイモのような甘さに思えました。
では、なぜ雪室より作業場が甘さを増したのでしょうか。
考えてみれば12月以降では明らかに作業場の方が寒く、雪室はむしろ暖かいはず。また湿度も当然雪室が高いでしょうね。推測するに、かえって凍るか凍らないかのギリギリの冷気で責めたてられた作業場の方が、限界パワーを発揮して糖化が進んだのかもしれませんね。
ただ9月10月の暖気による劣化を防ぐ意味では、8月下旬の収穫後、乾燥が終わった9月下旬に未選別のままでもとにかくいったん氷室に入れ、農閑期となる11月末頃に出庫して整理して作業場に格納するという方式が良いのかもしれません。ブヨブヨ感が少なく固くて新鮮みのある状態で冬を迎え、作業場で静かに冷気にさらし熟成をかける、というのがひょっとしたらベストのジャガイモを創出するポイントなのかも知れません。
盛岡近辺の生産者の方も真冬の作業場の冷気は当地と同じでしょうけれど、秋のうちの劣化のことを考えれば、やはり新鮮な状態のうちに出していただいて、冬場はわれわれ雪国からという住み分けをするというのはいかがでありましょうか。